臨床外科とは、臨床医学の分野の中の外科を指します。外科とは、手術によって患部を治療する医療技術のことです。
もともと、医学は内科を中心に発達してきました。内科の療法は薬による治療が中心で、麻酔のなかった昔は外科手術を行うのは非常に困難でした。

漢方薬や鍼や灸を中心とする東洋医学でも、治療法は内科と外科に分かれていますが、西洋医学ほどはっきりしたものではなく、
現代のような外科的手術を行うことはありませんでした。19世紀になって麻酔の技術が発達すると、臨床外科の分野は飛躍的な進歩を遂げます。

さらに、戦後になって人工心肺が実用化されると、なお一層発展を遂げました。
臨床外科の中で、メインとなるのは消化器外科ですが、これはあらゆる外科手術の中で、消化器系の手術が一番多いからなのでしょう。
人体の中で、食道から肛門に通じるすべての臓器が、臨床外科の範疇となります。

つまり、食道、胃、十二指腸、肝臓、胆嚢、膵臓、小腸、大腸、直腸、肛門までが臨床外科の対象なのです。
人体の中で腎臓や尿管、膀胱などの泌尿器と、子宮や卵巣などの婦人科の領域を除けば、腹部の病気はすべて臨床外科の範囲と言ってもいいでしょう。
肺や心臓、脳などの疾患も、投薬による治療を施す場合もあるものの、ある程度重篤な症状になると、臨床外科による治療を行うケースがほとんどです。

また、交通事故などによる負傷も、整形外科を含む臨床外科の範囲となります。
最近では腹腔鏡、胸腔鏡による手術も増えており、外科手術といっても、必ずしも切開しなければならないわけではありません。
ひと口に臨床外科と言っても、このように多岐にわたるため、それぞれの分野で多くの専門書が出版されています。
臨床外科の書籍は高価なものが多いため、古書店で買い求める人も少なくありません。